漢方の名称

漢方という名の由来について

〔画像/『皇漢医学』湯本求眞〕
漢方とは「漢土の方術」という意味がこめられています。これは日本から見た漢土(現在の中国の国土)であって、漢土から伝来した医術を指します。つまり漢方とは和製語であります。いつ頃から使われたかというと、案外新しく幕末であります。幕末ということは、当然その頃日本には西洋医学がかなりの勢いで普及しています。ですからそちらの方は「蘭方(らんぽう)」とも呼ばれていました。

この漢方の表記については、浅田流など一部の流派では「漢法」と書く所がありました。これはなかなか蘊蓄のある書き方でして、およそ世の中で、その道の決まりごとを厳格に記しものは、ほとんど「法」の字が充てられました。仏の道は「仏法」ですし、戦術書といえば「兵法」ですし、しきたりは「作法」というように…。しかし「漢法」は「漢の天子の定めた法律・漢代の法律」(『新字源』)という別の意味もあるため、私は勉強会の仲間内でのみ「漢法」という字を使っています。また明治末期から昭和初期においては「漢方」に代わって「皇漢医学」という名称が使われていたこともありました。

このように現在漢方といわれているものは、その根本の治療方法と理論は、古(いにしえ)の中国医学に端を発します。しかし室町時代に日本に伝えられ、始めのうちこそその模倣に終始していましたが、徳川時代になって、儒教の影響も相俟って日本独自の発展を遂げました。一般には意外に思われるかもしれませんが、狭義の漢方は日本の伝統医学なのです。そのため日本の先哲の考え方にこそ漢方の本質があり、そこがとても重要なのです。